野辺送り
白く細い煙が高く空に上がっていく。
晴れた空に吸い込まれるそれはまるで何かに導かれているようであり、その迷いのなさに複雑な気分になる。
嬉々として彼を連れて行く二人の幻想まで見えてきた気がして、ヴィラルは同じように空を見ていた掌の上の生き物に眼を落とした。
「…ブータ」
しかし名前の持ち主である彼は既にそこには居なかった。
つい先ほどまでヴィラルの手の中で暖かな鼓動を刻んでいたはずの小さな体は既に何の反応も返さないし、動きを生み出すこともなかった。
身体はまだ温かいというのに、もうそれは抜け殻でしかないのだ。
「お前はまったく…」
見事だというしかない。唐突なことなのに驚くことも出来ないくらいに。小さな生き物の、あまりの一途さにヴィラルは掌の中の重さに深い敬意を覚えた。
荼毘の焔は盛りを過ぎたけれど、この小さな体を骨に返すくらいの力はまだ充分にあるだろう。
「…いいな?ブータ、シモン」
応えなど返るはずもないのに尋ねてしまったのは一抹の淋しさと、隠し切れない羨望のせいだろう。しかし立ち上り続ける白い煙に促されるように、できるだけそっと焔の中に小さな重みを落としてやる。焔に近づきすぎたせいか、ちりちりと皮膚の表面が焼けて痛んだが頓着することはなかった。
くべられた小さな体はすぐに焔に巻かれて見えなくなる。あがる煙も心なしか太くなったようだった。
このまま、焔が途切れることなく一昼夜。小さなブタモグラの骨は形を残さないだろうが、同じ焔で燃やされたのだから、きっと彼の骨と同化しているだろう。
その白い花のような骨を持ってここから去ろう。何も言うことはなかったが、彼が望む場所に届けてやるくらいの甲斐性はあるつもりだった。
あの街の、彼らの隣に当然のように。
だが急ぐ旅ではない。長年の相棒であるエンキドゥドゥに彼らを乗せて、ゆっくりと。
幸いなことに時間だけは腐るほどあるのだから。時を止めた彼らに急かされることもないと摘み集めた白い花々をも燃え盛る火にくべながらヴィラルは誓った。
そしていつか、彼らの隣で眠ろう。
野辺送り〈了〉
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