時が止まったみたいに動かなくなってもう随分たったんじゃないだろうかと、白いシーツに横たわるふたりは思った。
久しぶりにシーツを洗った今日は晴天。一日中良く晴れて、太陽が沈んだ今は星がきらきらと瞬いている。月も出来すぎたくらいにまん丸で、灯りなんてつけていないのに目の前の人の顔が良く見える。
シーツからは、石鹸の匂いとお日様の暖かさ。
横たわるだけで体中を温めてくれる。極上の心地よさ、本当なら体中の力を抜いて、欲求の赴くままに目をとじて柔らかな眠りの世界に飛び込んでしまうくらいなのに。
それをしないのは、目の前にじいっと自分を見つめる恋人の瞳があるからだった。
そうしてその恋人の瞳が自分と同じように、揺れているから瞬きすることすらもったいなくて、出来ない。
青白く月の光がふたりを隔離している気がする。まるで。
世界におれたちしかいないみたい。
ハボックの呟きにロイはかるく目を見開いてどうしてと思う。どうしてこんな時ふたり同じことを考えるのだろう。あんまり不思議だったから、ハボックにその疑問をぶつける。不思議を不思議のままいさせることが出来ないのが錬金術師の悪い癖だ。
でもそんなロイをハボックは責めもせず、変わりにどうしてでしょうねと真剣に考える。
節目がちになった青い瞳を金色の睫が覆っている。
ああ、金色の檸檬みたいな綺麗な色だと、何のてらいもなく思った自分が、気がつかないうちに、手遅れなくらいに目の前の男にいろんなものを奪われているのだと気がついて、どうしようもなくてため息をついた。
それをきっかけにふたたび青い瞳がロイを捉える。
たぶん。
うん、たぶん?
先を促すと、静かに大きな彼の手が、指先を包んでくれた。ほんの少し自分よりも冷たいはずの彼の指先にほんのり感じた体温にびくりと身体が反応する。息を飲んだロイを見つめるハボックの青い瞳が先ほどよりも色を深めたのに、彼が静かにロイを求める心を深めているのを知り、瞳が滲む。
いいえ、きっと。
きっと?
いいかえて、確信を強めて。
あなたがおれのものだからでしょう。
応えに息を飲む、まだからだも重ねていないのに、そんなことをいう。そんなことがあるはずがないのだと、否定できないのは浅はかな希望が胸を占めているからだ。だってそうだ、写したように同じ根拠が、私が所有されていることにあるのならば。
それならば。
はい。
唇が緊張に乾く、裏切られないだろうと思うのにそれでも恐れるのは、私が大人という生き物だからか。力は強くなってつかめるものも多くなるのに、その代償に生まれた時には体中に詰っていた暖かいものをなくした大人だから。
それでも、そんな愚かさの中にも一つ輝くなにかがほしい、それがあればきっとこれから。
ここから幸福に生きていける、たとえあなたをいつか失くすのだとしても。
お前も私のものだというのか。
言葉がロイの唇を離れたのを待っていたかのように、荒々しい口づけがロイを襲った。
停滞していた時は動き出して、願うがままに初めて手に入れた熱に、声をあげて絡めとられて落とされる。理性なんて無かったみたいに乱れて、苦痛になるくらいに注がれて暴かれて。
あなたがはじめに、俺を奪ったのに。
そう、囁く声をこそ楔のように感じながら、はじめて抱かれた。
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