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新盤日和見天体図

立派な貴腐人になりました。よろずにまったり展開中。

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女神の言祝ぎ

春の花嫁はいっそう幸福そうに見える。
長く傍に仕えていた副官のそれとなれば、さらに、だ。
とっくにとうのたった女が、と渋る彼女を説き伏せたのは親友の忘れ形見だった。もうすぐ少女の殻を脱ぎ捨てて美しい女性に変わるだろう、彼女はまさに、萌え立つ春の息吹のような新緑の瞳を煌かせていった。
『ママのドレスね。すっごく綺麗で私これを着て花嫁さんになるんだってずっと思ってたのよ?でもね!くやしいことにこのドレス私のサイズに致命的にあわないのよ!やになっちゃう!むかしっから思ってたけどママってば小柄なくせにグラマラスなんて本当にパパってばいい趣味してるんだから!』
淑女が口にするには少々あれな言葉だったが、美しいかんばせに妙に似合っているのだから不思議なものだ。彼女はこの国の最高学府でも才女として名を馳せているらしく、血は争えないものだと周囲の者達は思っている。
『だってパパの娘だもの、これくらい出来なきゃ恥かしいわ』
それが彼女の口癖だったが、その中にどれほどの想いをこめてきたのかを思うと、彼女のそのしなやかな強さに感服し、そしてまた血を強く感じる。彼の、そして年齢を重ねてなお美しい彼女の。
『だから、リザさん私の代わりにこれを着て?神様の前でもう一度このドレスで誓ってほしいの、それでね』
そこで彼女はそっと瞳を閉じて祈るようにささやいたのだ。
『今度こそ、ずっとずっと幸せに暮らしました…っていう終わりにしてあげてほしいの』
ほんとうは、私がそうしたかったんだけどね。あーあ、変なところばっかりパパに似ちゃったな。
少し前までの真剣さを置き去りにしたように溜息をつく彼女は、母親よりも頭一つ以上背が高い。彼女の父親もとても長身だったから、これは間違いなく彼の遺伝でそれを嘆く彼女はしかしとても嬉しそうだった。
『ね、お願い?リザおねえちゃん』
そしてとどめに幼いころの呼び方と輝かんばかりの笑顔、これに逆らえるものはないだろうと仲間内ではもっぱらの噂で、クールビューティーの名をほしいままにするリザ・ホークアイもその例に漏れなかった。
しばしの沈黙の後、こくりと頷いた彼女に歓声を上げたのは、説得に当たった彼女ではなく、ずっと無言でことの成り行きを見守っていた恰幅の良いホークアイのフィアンセだった。
歓喜の声と共に何時もの冷静さを投げ捨ててホークアイを抱えあげてくるくると回りだした。目を瞠ったホークアイの制止も聞かず、はしゃぐ様にやがてその場は笑いに包まれた。ホークアイもまるで少女のように屈託なく笑って、例えようもなく幸福に見えた。

そして、そのまま彼女は白い幸福な花嫁に。

「きれいっすね、リザさん」
「ああ、私達自慢の女神だからあたり前だ」
「ブレダの奴今日のためにダイエットしたんですよ、今更ですよねえ」
「ふむ、しかしこれから奴は父親にもなろうから健康は大事だ。いい機会と思って継続してもらわねばな」
「はは、そっすよね俺らの女神を独り占めするんですから気合入れて幸せにしてもらわないと」
ただでさえリザさんのシンパに睨まれてるんですから。
「ああ…だが」
心配はないだろう、と目を向けた先ではただただ幸福に笑う二人。祝福のライスシャワーを受けながら、チャペルから歩み出てくるところだ。
今やおいそれと出歩くことの出来なくなったロイは、このささやかな結婚式には公には出席することを拒んだ。
本来であれば花嫁の介添え人をこなすくらいの勢いだったが、これもこの国のトップに立ったがための代償だとわかっていたので、溜息一つで不満を呑みこんだ。
…こればかりは、親友の忘れ形見がどれほど説得しても首を縦に振ることは出来なかった。
それでも。
それでも少しだけでも、彼女らの幸福を目に収めたいと思うのは間違いではないだろう。長い付き合いだからこそ、こと自分の身の安全には厳しい護衛官もそれを赦してくれた。…勿論、彼がいくら優れた軍人とは言っても一人で大総統その人を警護するには不安が残る。
ので、実はこれまた古い付き合いの、兄弟の毛錬金術師にも協力を頼んで、ようやくチャペルから少し離れた木立に身を潜めることが出来た。
声をかけることも、祝福のキスを頬に落すことが出来なくても。彼女がこの上なく美しく、幸福に輝いているところを目に焼きつけることが出来てロイは幸福だった。…自分が、自分達がこんな風には祝福はされないと理解しているから、余計に。
「…大総統、あれ…リザさん、こっち見てます」
「気がついたか。流石だな…」
言われて見れば。美しく装った彼女は、しっかりとロイ達のほうを見つめていた。最近は現場に出ることはなくなったが、それでも彼女の鷹の目は僅かも衰えていないらしい。
「…なんか、言ってません?」
「…残念ながら私はお前達ほど目はよくないのだがね、ハボック大尉?読唇位して通訳する気はないのかね」
「えーえー、気がつきませんでって…と、ええと…あーちょっともっと、ゆ、っ、く、り、お、ね、が、い、します…おお、流石リザさん、優しい!」
「ハボック…」
おまえ、いい加減にホークアイに甘えるのをやめないか。
呟いてもハボックは知らぬ顔だった。というよりも、再度同じことを語り始めたのだろうホークアイの唇の動きを読むのに夢中だったのだろう。
「『…病めるときも、健やかなる時も、永久の眠りにつくそのひまで』」
「……」
遠くでもわかる、鮮やかに美しいその笑顔で、花嫁は宣誓を求める。
「『…共にあることを、私にちかえますか?』…って…わあ…リザさんってば」
宣戦ともいえる、誓言を神ではなく、自らに求める美しく幸福に輝く彼女。
「…確かに、いるかなしかの神などよりはよほど信憑性はあるが…流石、だな」
その意気や、やはり彼らの女神たる所以でもう何度目かわからない感嘆を彼女に捧げてロイは笑った。
「…で、」
そこにかかるのは、慣れ親しんだ男の声だ。
「で?ロイさんは、誓ってくれるんですか?俺とずっとそれこそよぼよぼのじいさんになっても共にあるって?」
「…ハボック」
「因みに俺の答えは『Ido』しかないっすから」
…傍に、ずっとあるとは約束は出来ない。彼をこの世界のきっと何よりも愛している。しかしそれだけで全てが収まっていくほど、ロイの立つ位置は甘くはない。
「…いつか。いつか嘘になるかもしれないぞ」
「かも、でしょう。確定じゃないです」
俺が勝手についていくから、嘘にさせないようにするから、アンタは好きにしたらいい。嘘になるかもなんて心配しないで、ただ。
「誓うって、そういえばいいんですよ」
「…ならば」
私の答えも、Ido、しかないだろう。
こつ、と額が合わさる。伝わる熱に不覚にも涙が零れそうだと思った。
「…やめるときも健やかなる時も、あなたを永劫に愛することを」
「私達の女神に誓おう」
そっと唇を重ねる。暖かくこれほどに柔らかな口づけも久しぶりだと思えば、何故だか笑いが込み上げてきた。
「…誓っちゃいましたねー。俺ら男夫婦っすよ?」
「男夫婦言うな。まあ、見届け人はリザだけだが、かまわないだろう」
ちら、と見れば満足げに笑う彼女。強かなその笑みは少し純白のドレスにはそぐわないかもしれないが、いっそ彼女らしい。
「…あーー、やっぱアンタ忘れてたんですね、ロイ」
「んん?なにを、だ」
『このクソ大総統ーーーっ!何がかなしゅうて男夫婦の結婚の瞬間なんぞ目撃かつ警護してなきゃなんねーんだ独身貴族舐めてんじゃねーーーーぞーーーー!』
いかなる錬金術か、大声なのに潜めたいかにも矛盾した音がロイの元に届いた。
『兄さんっ!せっかくのめでたい席になんてこというの!いつもお世話になってるんだからちゃんとご祝儀もださないといけないくらいなのに!あ、おめでとうございますお二人とも!』
『うがーーー俺は世の独身貴族の代表として断固戦う!あの色ボケ男夫婦をたたきのめーす!』
『だから!独身貴族なんて兄さんが甲斐性がないからでしょ!ウィンリィがいつも僕に愚痴ってるんだからね!自分の甲斐性のなさとヘタレさ加減を反省する方が先だろう!?本当に小さい男なんだから兄さんは!』
「…うわあ……」
「…会心の一撃、だな」
「禁句が軽く4つ在りました…」
アルフォンス恐い。
「…でも、この面子が見届け人なんですから、何があっても大丈夫な気がしますよ」
「なにか起ること前提か、このネガティブ思考」
「平穏無事に行けるとでも?」
ちろ、と流された視線には苦笑で否定を返した。そう、何もなく二人生きていけるとは到底思わないけれど、だけど越えてはいけると信じることが出来る。
その根拠を今日手に入れた。
「越えていけますよ」
「山も谷も?」
聞き返せば満面の笑みが応える。
「花も嵐もね!」

そして咲き誇るのだ。

「何いい話っぽく〆てやがんだ!」
「兄さん!いい加減突っかかるのやめてよ!そんなんだからいつもウィンリィに小さいって言われるんだよ!」
「ぐっはああああああああ!」
…外野の声は聴こえないことに、と二人そっと頷いた。
そうでもしないと、夢に出そうだ。
「「アルフォンス恐い…」」

そんな春の、幸福な一日のお話。



大総統ロイ設定です。
当家のハボロイにはブレリザがありえんほどからんできます(笑)こねたログその三でした。
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