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新盤日和見天体図

立派な貴腐人になりました。よろずにまったり展開中。

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HIDE AND SEEK



くらやみをおそれないこどもだったそうだ。
小さな子供を戒めるための、狡猾な昔語り。闇夜に潜む危険。

いいこにしていなさい、わるいこはまよなかにさらわれてかえってこれなくなるわよ。夜中に窓の外から伸びてくる、悪魔の手が悪い子を捕まえていってしまうから。だから、暗くなったらお外にでてはいけないわ。

母親にそう囁かれれば、幼く純真な子供たちは一様に泣き出して怯えて暗闇を恐れて陽の光がおちきらないうちに家に帰ってくる。
まるで何かに追われるように、だ。
それはいつか意識もしないうちに克服される恐怖だが、その一方で深く意識の中に根付く。

くらやみはおそろしい。
ひかりのとどかないくらいばしょには魔物がひそむ。

根拠もない、それはきっと真実。
とるに足りない御伽話、それでも僅かたりとも人はくらやみを恐れるのは知っているからなのだ。

くらやみのなかには魔物が潜んでいる。闇のなかから手を伸ばし、つかまってしまえば二度と。

もう還れない。

「…しらないわけではなかったでしょうに?暗くなったらおうちに帰りましょう。玄関のドアはしっかり閉めて寝室の窓にはカーテンを」
暗闇を、追い出すように。
「なのにこんな時間に出歩いて…?つかまってしまうって、わかっててやってんのかな」
血の匂いがする。息が触れてしまうほど近くにいるはずなのに、暗闇に塗りつぶされて何も見えない。
僅かな光さえあればそれを弾く金色の髪の一筋くらいみえたろうに、ここは真のまくらなやみ。
証拠に。
「あんたみたいな人のこと、飛んで火にいる夏の虫っていうんですってね」
魔物が、ひそんでいる。
「ここは俺の境界なんですよ?知らずに…いいや違いますね、知ってて飛び込んできたんだから、もう、」
かえさない。
血の匂いがさらに強くなった。頬に熱い吐息を感じたと思ったら、嬲るように頬を生暖かい舌が舐めあげていく。
硬い地面に押し付けられた背筋を、恐怖に似て異なる悪寒が走る。
ぞくり、と思わず身を捩じらせれば、それをなんと取ったのか血の匂いをいっそう強くして、魔物が笑う。
わらったまま、なんの気負いもなくべったりと血に濡れた刃物で軍服の硬い生地を切り裂いてゆく。恐ろしいくらいに手馴れた仕種で。
「常習か…この強姦魔」
漏れた声には、まさか、と笑い声が返った。
「言ったでしょう?皆くらくなったらおうちに帰るモンですって。俺が会ったのはあんたが初めてですよ、暗がりにつかまりたがる人間」
なんだ。わかってしまっていたのか、と肩の力を抜く。
くらやみに惹かれる自分の性質を知らないわけではない。むしろ自制が必要なほどに理解している。
自分は暗闇に惹かれる。その闇が濃ければ濃いほど、誘蛾灯に誘われる虫のように吸い寄せられる。その引力はとてつもなく強くあらがいがたい衝動で。
身を滅ぼすとわかっていても、抗えない。
そうして錬金術に掴まったように。
「観念して、俺のモンになるんですね。もっとも逃がしやしませんけどね…もう二度と」
血の味のする口づけが降ってくる。あまりに濃く、甘くすら感じるほどの夥しい血の匂い。知っている。これほどに来い血臭を放つためには一体どれくらいの命を屠ればいいのか。
伸ばした指の先に触れる、鉄臭い冷えた液体の意味を、もう考える必要はきっとないのだろう。
悟る。
「いいさ、どうとでもするがいいよ。そうするのが私だけならば許そう」
「あんた、この期に及んでそれですか」
えらそうにして。ああ、でもそれがアンタらしいか。
言って笑う彼…ハボックはあとはもう何も言葉にせず、喉笛にくらいつき、肌を吸いこの身を暴く。
深く、踏み込んで傍若無人にこの身を荒らすのを恍惚と受け止める。

深く染み入る、男の熱を愛しているのだとまくらな視界にぼんやりと思った。

くらやみにはまものがひそむ。
ならばそのくらやみこそがもっともくらいまものなのだ。

だからまくらなやみを飼う男を愛するのは至極あたり前のことなのだろうと告げれば、彼は嫌そうに眉を潜めてあんたさいあくだな、と呟いたので。
だからお前にほれるんだろう、と嗤ってやった。

くらやみのなかのかくれんぼ。
ほんとうのまものはだあれ?



今更ですが私はどちらかというとこういった薄暗いシリアスのほうが書きやすいです。変大佐とか書いていると信じてもらえませんが(笑)
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