「ロイさんは、どんな方がお好きなの?」
夜の蝶。
古めかしい言葉で言えばそう。このことばを初めに思い至ったひとふは誰だろう、などと考える少し酒精が回った頭。
聞いてきた彼女は、その形容通りに夜と、薄暗い照明、それからすずらんの香水、紅いルージュ、上品なドレス、絢爛な宝石の似合う女性。
「案外、ふわりとしたドレスを着て、甘いお菓子の匂いがするそんな子がお好きかしら?」
言葉を紡ぐ彼女とは正反対の像を提示してくる。ロイの立場でそれはないだろう、と揶揄しているのか今日持ち込まれた少々やっかいな縁談のことをからかっているのか。
年齢不詳の顔には老獪な笑み、そんなに年嵩には見えないのに、女性は本当にわからないと何度目かわからない思考を脳裏に焼き付ける。
「ねえ。教えてくださらないの?」
少し本気じみた気配が感じられる。正直に答えたほうがきっと何もかも上手くいくと本能が。彼女は賢いひとだからそれだけで充分。
「煙草とナイフと、銃弾と汗と、誇り、それから血。もうひとつ。日向が似合うヒトですかね」
ぱち、と素晴らしく長い睫が揺れる。
「それじゃあ私では役不足ね」
「貴方はとても魅力的ですよ」
ただ、ほしいと思わないだけで、と瞳だけで語ればひどいひと、と紅い唇が零した、ので。
「よく言われます」
応えれば、最低ね、と一言。
まったくだ、と頷く自分を遺して彼女は去っていった。
さて彼女が今夜羽を休める、暖かな葉があればいいのだけど、と煙草臭いが、とびきり暖かいねぐらをもつ優越感で思って席を立った。
まったく、ひどいオトコだと、自讃。
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