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新盤日和見天体図

立派な貴腐人になりました。よろずにまったり展開中。

二次創作、BL、腐向けに免疫のない方はゴーバック。他閲覧は自己責任でお願いいたします。

MASTER:遠野梓

20100118 改装に伴い通販ページ作り直しました。BOOKSからご確認くださいませ。

二次創作、BL、腐向けに免疫のない方はゴーバック。他閲覧は自己責任でお願いいたします。

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宿り木

「ロイさんは、どんな方がお好きなの?」

夜の蝶。
古めかしい言葉で言えばそう。このことばを初めに思い至ったひとふは誰だろう、などと考える少し酒精が回った頭。
聞いてきた彼女は、その形容通りに夜と、薄暗い照明、それからすずらんの香水、紅いルージュ、上品なドレス、絢爛な宝石の似合う女性。

「案外、ふわりとしたドレスを着て、甘いお菓子の匂いがするそんな子がお好きかしら?」

言葉を紡ぐ彼女とは正反対の像を提示してくる。ロイの立場でそれはないだろう、と揶揄しているのか今日持ち込まれた少々やっかいな縁談のことをからかっているのか。
年齢不詳の顔には老獪な笑み、そんなに年嵩には見えないのに、女性は本当にわからないと何度目かわからない思考を脳裏に焼き付ける。

「ねえ。教えてくださらないの?」

少し本気じみた気配が感じられる。正直に答えたほうがきっと何もかも上手くいくと本能が。彼女は賢いひとだからそれだけで充分。

「煙草とナイフと、銃弾と汗と、誇り、それから血。もうひとつ。日向が似合うヒトですかね」

ぱち、と素晴らしく長い睫が揺れる。

「それじゃあ私では役不足ね」
「貴方はとても魅力的ですよ」

ただ、ほしいと思わないだけで、と瞳だけで語ればひどいひと、と紅い唇が零した、ので。

「よく言われます」

応えれば、最低ね、と一言。
まったくだ、と頷く自分を遺して彼女は去っていった。

さて彼女が今夜羽を休める、暖かな葉があればいいのだけど、と煙草臭いが、とびきり暖かいねぐらをもつ優越感で思って席を立った。

まったく、ひどいオトコだと、自讃。




ロイさん臆面もなくのろける。
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夢見がちなヒーロー

夢見がちなヒーロー

「…なんだお前この怪我は」
「ちょっと下の奴らともめました」
 ハボックが応えると目の前の上司は、数秒絆創膏が貼り付けられたハボックの鼻っ柱を見つめると、フン、と鼻を鳴らして再び書類に目を戻した。
 タイミングを見計らっていた傍らの美貌の副官が、さっとサインの終った書類を新しいものと取り替える。
「みっともない。明日にははがせよ」
「…イエス・サー」
「下の奴ともめてどうする。お前は上官だろう、下に信用されない上司などくずだ。使えない犬は私は要らんぞ」
「イエス、サー。本日中に解決します。つきましては、うちの隊の二、三人しばらく休暇を頂きたいと思います」
「…有給が余っているなら良い。その間の任務に支障がないようにしろ。それから労災は出ん」
「……いたいっすねそれは」
「面倒見るのが上官の務めだろう」
「うわ、アンタ俺が同じことになったらちゃんと面倒見てくれるんすか」
「何度も言わせるな、私は使えない犬はいらんと言ったろう」
 溜息が一つ。今度は目も向けられることはなかったが、それでもハボックは綺麗な敬礼を決めると、踵を打ち鳴らして上官の執務室を後にした。
 金髪の、美貌の副官の横をすり抜ける際、氷のような温度の声が囁いた。
『goodboy』(いいこね)
 飼い犬を褒める時のように一言囁いた彼女は、その美貌に壮絶な笑みを浮かべてハボックを労った。
 同じ笑みが、自分にも浮かんでいることを彼女の瞳に映る自らの姿で確認して、ハボックは扉をくぐり、そのまま医務室に向かう。そこには先ほどハボックが鼻頭の擦り傷と引き換えに叩きのめした屈強な男が数人、ベッドに伸びているはずだ。
 じん、と拳に暴力の名残が滲む。
 ハボックは笑ってもう一度拳を握りしめると、躍るような足取りで医務室に向かった。
「…誰がボスなのか思い知らせないと、なー」
 あーあー、面倒くさいこと。
 安い正義感はきらいじゃない。それを振りかざすのも、まあヒトとしてはあたり前で可愛らしい行為だと笑っていられる。
だがそれだけならこの群れには必要がない。
 だからいま、彼らの根幹を形作る安い正義感を屈辱的なまでに叩きのめしてやろう。圧倒的な力をもって。
 一度折れた心で、それでもその正義を叫ぶときは。
 そこまで考えたところで医務室についた。ハボックは一つ首を振ると、口元の笑みを深めてドアを叩く。
 するりと扉の向こうに長身が滑り込んで後の数十分は永劫に空白となり、その日医務室の白いベッドで横になっていた男の中で軍務に復帰したのは僅かに一人のみとなる。
 その彼はしばらくは狂犬のような目をしていたが、いつの間にかジャン・ハボック少尉の下精鋭と呼ばれる隊員の一人になったという。何があったと、酒場で彼に尋ねた同僚はこんな答えを彼から貰ったという。
『ごっこ遊びだ。一度はしたことがあるだろう?ヒーローごっこの仲間にいれてもらったのさ』
 そう笑って、グラスを煽る彼の首、頚動脈の丁度上に薄らと残る一筋の切り傷。同僚はどこかでそれを見たことがあると思った。
 浅くもなく深くもないそれを、どこで見たのか彼が思い出したのは、ロイ・マスタング中佐が大佐になったその日だった。堅苦しい式典を終えて、軍服の襟を弛めたジャン・ハボック少尉の首筋にくっきりと残るその傷。友人と良く似た傷はしかし、友人のそれよりも長く色濃く…身に負ったときは致命傷ともなりえたろうその傷にぞくりと背筋が震えた。
 友人の傷は、ハボックのそれと似ている。しかしハボックのそれも、また別の何かに似ている、と彼が夢見がちに記憶を探っていると、ハボックの傍らの上官…マスタング大佐が急に振り返り、そして彼が自分達、主にハボックを見ていると知るとにこり、と笑みを浮かべた。
 ああ、あれは、あの傷は首輪だ。
 彼は脚が竦んでいた。そうこうする内に、マスタング大佐とハボック少尉の周りを彼の同僚を含んだ所謂マスタング机下の者達が囲んだ。そうしてその彼らの眼を見たとき、彼は恐怖に耐え切れず踵を返すと、その場を走り去った。
 それ以降、彼はあの同僚と連絡を取っていない。
『ヒーローごっこに入れてもらったのさ』
 あの日の同僚の言葉が甦る。
 その意味を考え直そうとして、家路を急いだ。
 自宅で待つ、妻と息子の瞳を速く見たいと思った。

 そして息子にはヒーローにはなれないんだと伝えようと思った。

 あんな狂人の目を、息子には持って欲しくない。



ハボックさんがナチュラルにリン●しているではないかとかは気にしてはいけませんです。

ねむりはいらない

「アル、寝るぞ!」
「うん。って兄さん本当にベッドで寝なくていいの?僕は気になんて」
「うるせ、俺と寝るのがそんなに嫌なのかお前は」
「じゃなくて、こんな床に寝るくらいだったら宿に入った意味が無いじゃんか。兄さんだけでもゆっくり休みなよ。兄さんは僕と違って生身なんだから」
「アル」
名前を呼ばれて、あ、しまったと思った。
やっぱ兄さんは難しい顔をして僕を見ている。この件に関しては本当に彼は神経質だ。
当事者である僕よりももっと。この後の言葉も想像がつく。
「お前は。お前だアル」
「お前は俺の弟なんだから」
「床になんて寝てたら辛い。俺は弟にそんな想いをさせる兄貴じゃねえ」
思っていたのと変わらない声が聴こえてくる。
「うん」
じっと恐い眼で見つめてくる兄さんに頷いて応えると、満足そうに笑った。
そのまま身を横たえる。宿のヒトには申し訳ないけれど、毛布は床にひかせてもらった。
「じゃあな、お休みアル。」
兄さんの呟きと共に、ランプの炎が吹き消される。
もぐりこんできた兄さんに体を寄せると、何も言わずに僕の懐に小さな身体が収まる。
そこからは響いたのは呼吸の音だけ。途中から少し間伸びた感じになったからもう兄さんは眠ったんだろう。
「アルフォンス…アル、」
「うん、何」
眠っている兄さんの声に返事をする。慌てることは無い。何時ものことだから。
覗きこんだ兄さんに顔が、悲哀に歪んでいる。ああ…苦しいんだね、兄さん。
「ごめん、アルフォンスごめん」
とじた瞼から涙が零れた。それを、金属の指でふき取る。口元に持って言ったけれど、味を確かめる術は僕には無かった。
次々に零れる涙、繰り返される名前。
「兄さん、僕は大丈夫だから」
止め処なく流れる涙は、昼間の彼とは思えない。
見回す室内は暗く兄さんの呼吸の音しか聴こえない。
それは鎧の体になる前には見たことのない兄の様子だった。仲の良い兄弟と思っていたが、それでもやはり僕は兄さんに守られていた。
だから、というのもおかしなことだけれど。
兄さん。僕はこうなっていて…こんな体でよかったと思う。
だって今の体なら、一晩中貴方のことを見ていられる。
「ごめんね兄さん」
ほかの人に譲るつもりもない。
「ごめん」
貴方が苦しんでも、それすら見つめていたいと思う。

ねむりはいらない

だからかなしまないでなんていえないでいる。



珍しくエルリック兄弟でした。
この二人も大好きですが、あまりかけないのが心残りです。

そうしてはじめて恋をする

「少尉、今日食事でもどうだ?」
「あー今日は隊の奴らと呑みに行くんで、スンマセン!ってか大佐もいっしょにどうですか?」
「そうか…せっかくのお誘いだが私がいたのでは隊員達が緊張してしまうだろう。またの機会にするよ」
「そうっすか…あ、大佐もまた誘ってくださいよ!ってか今度うちにまたメシくいにきてくださいって」
「ああ、そうだな。ではまたな」
「はい。ちゃんと仕事してくださいよ」
パタン。
「…ハボ、お前なあ…」
「んだよブレさん」
「つーか別に隊の奴らとなんていつでも呑みにいけるだろうが。大佐は“お前”を誘ったんだぜ?」
「わーってる」
「わかってねえだろ、あのひとは」
「ストーップ!ストップだブレダ。もう一度言うぞ。俺は“わかってる”んだ。」
「…じゃあ」
「わかってんだよ、こんな寄り道したらあの人がどこかで後悔することも、な」
「お前」
「心配しなくてもいいんだ、俺は何があってもあの人から離れない。何があってもだ」
「っていつまでだよ」
「お前こそわかってんのに聞くな。あの人が大総統になったらだよ」
「…お前馬鹿だろう」
「うっせ」
「心変わりされてもなぐさめてなんてやらないからな」
「だからブレダ。いい加減にしろよ、何度言わせるんだ。わかってるんだ」
見下ろしてきた瞳はガラス玉みたいな青。
狂人のそれと同じ色で親友はは囁いた。
「わかってるんだ、この先あの人は俺だけ好きでいる。だから俺は」

「あの人が、あの椅子を手に入れて」

そうして初めて恋をする


彼が狂信の瞳で信じる以外の未来の可能性を告げることは、恐ろしくてできなかった。



ぶれさん大好きです。(言うことはそれだけか!)
たまには黒ハボも!と思って書きました。

悲劇の起きる条件

昨日は東の町で子供が攫われて川に捨てられていた。
一昨日は西の村で幸せな親子が泥酔した男が運転する車に轢き殺された。
先一昨日は南の森で、若い娘が嬲られたうえに絞め殺されていた。
今日は北の教会で乱射事件が起きた。

かすかに残る火薬と血と汚物の臭気。
嗅ぎなれた匂い。
それから聞きなれた悲鳴。
かろうじて助かったのだろう、満身創痍の態で出血もひどい。
しかしその痛みを彼女は感じていないかのごとく、一点に視線を集中させて叫んでいる。その視線の先、通路を挟んだ向かいのベンチは真っ赤な鮮血に染まっている。
ここから見えるのは、ぐったりと後方にそらされる頭部。元はくすんだ金色だったろう髪が酸化したどす黒い赤に染まっていた。
ひたすらに彼女が叫ぶ名はふたり分。きっとこの人物ともう1人ここからは見えない誰かの名。それは想像するに易い、彼女の夫と子供だろう。
彼女が叫ぶ言葉が誰かの名前から『どうして』という疑問に変わっていった。
『どうしてこの子がこんなめに』『どうして貴方がこんな目に』『どうして私がこんな目に』『いつもかみさまに祈っていたのに』『何も悪いことなんてしていないのに』
『ひどい』『ひどいひどいひどいひどいひどいひどいひどい』
『どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして』

教会を銃撃したのは、どこにでもいるような青年だった。
テロリストでもなく、犯罪者でもなく、不幸だったわけでもなく。
打ちつくした拳銃を手に、取り押さえられた青年は駆けつけた憲兵が叫んだ、『何故』の言葉にたった一言応えた。

『日曜が嫌いだから』

紅く染まった礼拝堂の中に響き渡る声は、狂女の歌声のようにロイには聴こえた。
『どうして』と叫ぶ彼女に渡す答えを一つだけロイは持っている。
この答を渡したら、彼女は泣き止んでくれるだろうかと考えて、緩くかぶりを振った。
きっと更に彼女は絶望するだろう。これ以上はない、と思う悲劇は実は簡単に上塗りされていくものだ。
だからロイはその一言を胸にしまって静かに踵を返し、囁いた。

『人間である、それだけで充分だ』

小さな声は、狂女の歌声にかき消された。

悲劇が起きる条件

そうでしょう?悲劇なんて人のためにしか存在しないのだから。



日記でお題消化企画でした。
これはある歌を下敷きにしてまして、その歌もある事件を下敷きに生まれてます。元は日曜ではなく、月曜日ですけれど。

HIDE AND SEEK



くらやみをおそれないこどもだったそうだ。
小さな子供を戒めるための、狡猾な昔語り。闇夜に潜む危険。

いいこにしていなさい、わるいこはまよなかにさらわれてかえってこれなくなるわよ。夜中に窓の外から伸びてくる、悪魔の手が悪い子を捕まえていってしまうから。だから、暗くなったらお外にでてはいけないわ。

母親にそう囁かれれば、幼く純真な子供たちは一様に泣き出して怯えて暗闇を恐れて陽の光がおちきらないうちに家に帰ってくる。
まるで何かに追われるように、だ。
それはいつか意識もしないうちに克服される恐怖だが、その一方で深く意識の中に根付く。

くらやみはおそろしい。
ひかりのとどかないくらいばしょには魔物がひそむ。

根拠もない、それはきっと真実。
とるに足りない御伽話、それでも僅かたりとも人はくらやみを恐れるのは知っているからなのだ。

くらやみのなかには魔物が潜んでいる。闇のなかから手を伸ばし、つかまってしまえば二度と。

もう還れない。

「…しらないわけではなかったでしょうに?暗くなったらおうちに帰りましょう。玄関のドアはしっかり閉めて寝室の窓にはカーテンを」
暗闇を、追い出すように。
「なのにこんな時間に出歩いて…?つかまってしまうって、わかっててやってんのかな」
血の匂いがする。息が触れてしまうほど近くにいるはずなのに、暗闇に塗りつぶされて何も見えない。
僅かな光さえあればそれを弾く金色の髪の一筋くらいみえたろうに、ここは真のまくらなやみ。
証拠に。
「あんたみたいな人のこと、飛んで火にいる夏の虫っていうんですってね」
魔物が、ひそんでいる。
「ここは俺の境界なんですよ?知らずに…いいや違いますね、知ってて飛び込んできたんだから、もう、」
かえさない。
血の匂いがさらに強くなった。頬に熱い吐息を感じたと思ったら、嬲るように頬を生暖かい舌が舐めあげていく。
硬い地面に押し付けられた背筋を、恐怖に似て異なる悪寒が走る。
ぞくり、と思わず身を捩じらせれば、それをなんと取ったのか血の匂いをいっそう強くして、魔物が笑う。
わらったまま、なんの気負いもなくべったりと血に濡れた刃物で軍服の硬い生地を切り裂いてゆく。恐ろしいくらいに手馴れた仕種で。
「常習か…この強姦魔」
漏れた声には、まさか、と笑い声が返った。
「言ったでしょう?皆くらくなったらおうちに帰るモンですって。俺が会ったのはあんたが初めてですよ、暗がりにつかまりたがる人間」
なんだ。わかってしまっていたのか、と肩の力を抜く。
くらやみに惹かれる自分の性質を知らないわけではない。むしろ自制が必要なほどに理解している。
自分は暗闇に惹かれる。その闇が濃ければ濃いほど、誘蛾灯に誘われる虫のように吸い寄せられる。その引力はとてつもなく強くあらがいがたい衝動で。
身を滅ぼすとわかっていても、抗えない。
そうして錬金術に掴まったように。
「観念して、俺のモンになるんですね。もっとも逃がしやしませんけどね…もう二度と」
血の味のする口づけが降ってくる。あまりに濃く、甘くすら感じるほどの夥しい血の匂い。知っている。これほどに来い血臭を放つためには一体どれくらいの命を屠ればいいのか。
伸ばした指の先に触れる、鉄臭い冷えた液体の意味を、もう考える必要はきっとないのだろう。
悟る。
「いいさ、どうとでもするがいいよ。そうするのが私だけならば許そう」
「あんた、この期に及んでそれですか」
えらそうにして。ああ、でもそれがアンタらしいか。
言って笑う彼…ハボックはあとはもう何も言葉にせず、喉笛にくらいつき、肌を吸いこの身を暴く。
深く、踏み込んで傍若無人にこの身を荒らすのを恍惚と受け止める。

深く染み入る、男の熱を愛しているのだとまくらな視界にぼんやりと思った。

くらやみにはまものがひそむ。
ならばそのくらやみこそがもっともくらいまものなのだ。

だからまくらなやみを飼う男を愛するのは至極あたり前のことなのだろうと告げれば、彼は嫌そうに眉を潜めてあんたさいあくだな、と呟いたので。
だからお前にほれるんだろう、と嗤ってやった。

くらやみのなかのかくれんぼ。
ほんとうのまものはだあれ?



今更ですが私はどちらかというとこういった薄暗いシリアスのほうが書きやすいです。変大佐とか書いていると信じてもらえませんが(笑)

女神の言祝ぎ

春の花嫁はいっそう幸福そうに見える。
長く傍に仕えていた副官のそれとなれば、さらに、だ。
とっくにとうのたった女が、と渋る彼女を説き伏せたのは親友の忘れ形見だった。もうすぐ少女の殻を脱ぎ捨てて美しい女性に変わるだろう、彼女はまさに、萌え立つ春の息吹のような新緑の瞳を煌かせていった。
『ママのドレスね。すっごく綺麗で私これを着て花嫁さんになるんだってずっと思ってたのよ?でもね!くやしいことにこのドレス私のサイズに致命的にあわないのよ!やになっちゃう!むかしっから思ってたけどママってば小柄なくせにグラマラスなんて本当にパパってばいい趣味してるんだから!』
淑女が口にするには少々あれな言葉だったが、美しいかんばせに妙に似合っているのだから不思議なものだ。彼女はこの国の最高学府でも才女として名を馳せているらしく、血は争えないものだと周囲の者達は思っている。
『だってパパの娘だもの、これくらい出来なきゃ恥かしいわ』
それが彼女の口癖だったが、その中にどれほどの想いをこめてきたのかを思うと、彼女のそのしなやかな強さに感服し、そしてまた血を強く感じる。彼の、そして年齢を重ねてなお美しい彼女の。
『だから、リザさん私の代わりにこれを着て?神様の前でもう一度このドレスで誓ってほしいの、それでね』
そこで彼女はそっと瞳を閉じて祈るようにささやいたのだ。
『今度こそ、ずっとずっと幸せに暮らしました…っていう終わりにしてあげてほしいの』
ほんとうは、私がそうしたかったんだけどね。あーあ、変なところばっかりパパに似ちゃったな。
少し前までの真剣さを置き去りにしたように溜息をつく彼女は、母親よりも頭一つ以上背が高い。彼女の父親もとても長身だったから、これは間違いなく彼の遺伝でそれを嘆く彼女はしかしとても嬉しそうだった。
『ね、お願い?リザおねえちゃん』
そしてとどめに幼いころの呼び方と輝かんばかりの笑顔、これに逆らえるものはないだろうと仲間内ではもっぱらの噂で、クールビューティーの名をほしいままにするリザ・ホークアイもその例に漏れなかった。
しばしの沈黙の後、こくりと頷いた彼女に歓声を上げたのは、説得に当たった彼女ではなく、ずっと無言でことの成り行きを見守っていた恰幅の良いホークアイのフィアンセだった。
歓喜の声と共に何時もの冷静さを投げ捨ててホークアイを抱えあげてくるくると回りだした。目を瞠ったホークアイの制止も聞かず、はしゃぐ様にやがてその場は笑いに包まれた。ホークアイもまるで少女のように屈託なく笑って、例えようもなく幸福に見えた。

そして、そのまま彼女は白い幸福な花嫁に。

「きれいっすね、リザさん」
「ああ、私達自慢の女神だからあたり前だ」
「ブレダの奴今日のためにダイエットしたんですよ、今更ですよねえ」
「ふむ、しかしこれから奴は父親にもなろうから健康は大事だ。いい機会と思って継続してもらわねばな」
「はは、そっすよね俺らの女神を独り占めするんですから気合入れて幸せにしてもらわないと」
ただでさえリザさんのシンパに睨まれてるんですから。
「ああ…だが」
心配はないだろう、と目を向けた先ではただただ幸福に笑う二人。祝福のライスシャワーを受けながら、チャペルから歩み出てくるところだ。
今やおいそれと出歩くことの出来なくなったロイは、このささやかな結婚式には公には出席することを拒んだ。
本来であれば花嫁の介添え人をこなすくらいの勢いだったが、これもこの国のトップに立ったがための代償だとわかっていたので、溜息一つで不満を呑みこんだ。
…こればかりは、親友の忘れ形見がどれほど説得しても首を縦に振ることは出来なかった。
それでも。
それでも少しだけでも、彼女らの幸福を目に収めたいと思うのは間違いではないだろう。長い付き合いだからこそ、こと自分の身の安全には厳しい護衛官もそれを赦してくれた。…勿論、彼がいくら優れた軍人とは言っても一人で大総統その人を警護するには不安が残る。
ので、実はこれまた古い付き合いの、兄弟の毛錬金術師にも協力を頼んで、ようやくチャペルから少し離れた木立に身を潜めることが出来た。
声をかけることも、祝福のキスを頬に落すことが出来なくても。彼女がこの上なく美しく、幸福に輝いているところを目に焼きつけることが出来てロイは幸福だった。…自分が、自分達がこんな風には祝福はされないと理解しているから、余計に。
「…大総統、あれ…リザさん、こっち見てます」
「気がついたか。流石だな…」
言われて見れば。美しく装った彼女は、しっかりとロイ達のほうを見つめていた。最近は現場に出ることはなくなったが、それでも彼女の鷹の目は僅かも衰えていないらしい。
「…なんか、言ってません?」
「…残念ながら私はお前達ほど目はよくないのだがね、ハボック大尉?読唇位して通訳する気はないのかね」
「えーえー、気がつきませんでって…と、ええと…あーちょっともっと、ゆ、っ、く、り、お、ね、が、い、します…おお、流石リザさん、優しい!」
「ハボック…」
おまえ、いい加減にホークアイに甘えるのをやめないか。
呟いてもハボックは知らぬ顔だった。というよりも、再度同じことを語り始めたのだろうホークアイの唇の動きを読むのに夢中だったのだろう。
「『…病めるときも、健やかなる時も、永久の眠りにつくそのひまで』」
「……」
遠くでもわかる、鮮やかに美しいその笑顔で、花嫁は宣誓を求める。
「『…共にあることを、私にちかえますか?』…って…わあ…リザさんってば」
宣戦ともいえる、誓言を神ではなく、自らに求める美しく幸福に輝く彼女。
「…確かに、いるかなしかの神などよりはよほど信憑性はあるが…流石、だな」
その意気や、やはり彼らの女神たる所以でもう何度目かわからない感嘆を彼女に捧げてロイは笑った。
「…で、」
そこにかかるのは、慣れ親しんだ男の声だ。
「で?ロイさんは、誓ってくれるんですか?俺とずっとそれこそよぼよぼのじいさんになっても共にあるって?」
「…ハボック」
「因みに俺の答えは『Ido』しかないっすから」
…傍に、ずっとあるとは約束は出来ない。彼をこの世界のきっと何よりも愛している。しかしそれだけで全てが収まっていくほど、ロイの立つ位置は甘くはない。
「…いつか。いつか嘘になるかもしれないぞ」
「かも、でしょう。確定じゃないです」
俺が勝手についていくから、嘘にさせないようにするから、アンタは好きにしたらいい。嘘になるかもなんて心配しないで、ただ。
「誓うって、そういえばいいんですよ」
「…ならば」
私の答えも、Ido、しかないだろう。
こつ、と額が合わさる。伝わる熱に不覚にも涙が零れそうだと思った。
「…やめるときも健やかなる時も、あなたを永劫に愛することを」
「私達の女神に誓おう」
そっと唇を重ねる。暖かくこれほどに柔らかな口づけも久しぶりだと思えば、何故だか笑いが込み上げてきた。
「…誓っちゃいましたねー。俺ら男夫婦っすよ?」
「男夫婦言うな。まあ、見届け人はリザだけだが、かまわないだろう」
ちら、と見れば満足げに笑う彼女。強かなその笑みは少し純白のドレスにはそぐわないかもしれないが、いっそ彼女らしい。
「…あーー、やっぱアンタ忘れてたんですね、ロイ」
「んん?なにを、だ」
『このクソ大総統ーーーっ!何がかなしゅうて男夫婦の結婚の瞬間なんぞ目撃かつ警護してなきゃなんねーんだ独身貴族舐めてんじゃねーーーーぞーーーー!』
いかなる錬金術か、大声なのに潜めたいかにも矛盾した音がロイの元に届いた。
『兄さんっ!せっかくのめでたい席になんてこというの!いつもお世話になってるんだからちゃんとご祝儀もださないといけないくらいなのに!あ、おめでとうございますお二人とも!』
『うがーーー俺は世の独身貴族の代表として断固戦う!あの色ボケ男夫婦をたたきのめーす!』
『だから!独身貴族なんて兄さんが甲斐性がないからでしょ!ウィンリィがいつも僕に愚痴ってるんだからね!自分の甲斐性のなさとヘタレさ加減を反省する方が先だろう!?本当に小さい男なんだから兄さんは!』
「…うわあ……」
「…会心の一撃、だな」
「禁句が軽く4つ在りました…」
アルフォンス恐い。
「…でも、この面子が見届け人なんですから、何があっても大丈夫な気がしますよ」
「なにか起ること前提か、このネガティブ思考」
「平穏無事に行けるとでも?」
ちろ、と流された視線には苦笑で否定を返した。そう、何もなく二人生きていけるとは到底思わないけれど、だけど越えてはいけると信じることが出来る。
その根拠を今日手に入れた。
「越えていけますよ」
「山も谷も?」
聞き返せば満面の笑みが応える。
「花も嵐もね!」

そして咲き誇るのだ。

「何いい話っぽく〆てやがんだ!」
「兄さん!いい加減突っかかるのやめてよ!そんなんだからいつもウィンリィに小さいって言われるんだよ!」
「ぐっはああああああああ!」
…外野の声は聴こえないことに、と二人そっと頷いた。
そうでもしないと、夢に出そうだ。
「「アルフォンス恐い…」」

そんな春の、幸福な一日のお話。



大総統ロイ設定です。
当家のハボロイにはブレリザがありえんほどからんできます(笑)こねたログその三でした。

春の悪戯

ロイは春が好きだ。
暖かくなって動きやすくなるし、景色だって鮮やかに色づく気がする。
町を行く人々の装いも軽やかになって、…まあ正直に言えば、ご婦人方の格好が。
男としてとても正直に、眼福なのだ。
ロイとしては真夏の露出ギリギリ、という格好よりも、ヒラヒラと風邪になびくスカートに色気を感じる。
よって春は彼にとってはとても良い季節、であったのだ。
そう、つい三年ほど前までは。

「―――っくしゅっ!」

聴こえた音に嘆息する。立ったそれだけの間にも、背後ではくしゅんくしゅんと盛大にくしゃみをしている。そのうち、ずずっと洟を啜る音と、ティッシュを取り出すかすかな音、それからちーん、と盛大に…盛大に洟をかむ、音。
全くもって色気の無いことこの上ない。
そう。色気がない、それは事実だ。
事実なのに。
「…ハボック。今年も、か」
「ことじも、って…ごれなおるようなもんじゃないって…っクシュっ!」
言い切らないうちにまたくしゃみ。ティッシュボックスに伸びるて。しゅしゅしゅっと音が…しない。
「うああああああ…ティッシュ切れた…」
「…無節操に使うからだ」
「づかわないとはなたれてしかたがないんすよう…」
そんなことはわかっている。わかっているがこの状況に、厭味の一つも言いたくなるのは仕方がないだろう。
と、ロイはデスクの引き出しの一番下から昨日買い求めたものを取り出した。
「…っ大佐、それ!」
「全く私の部下が鼻を真っ赤にしていては示しがつかんからな。施しだ」
「なんすかその言い方は…でもうれしーっすありがとうございます!」
にこ、と笑う気配。それまで実は巧みにハボックを直視しないようにしていたロイだったが、ついつい真直ぐにハボックを見つめ返してしまった。
「ぐっ…!」
結果、おかしな感じに息をつめるはめに陥った。
「!?だいざっ?どしたん」
「お、お前、洟が垂れてるぞ!情けない!」
「うお!?まじっすが!」
うわちょっとまって、といそいそと受け取ったばかりのティッシュを引き出すとちーんと洟をかむハボック。
その未知の柔らかさに、おお!と人知れず感動している彼からその隙に必死にロイは目を逸らした。
…はっきりいって目の毒、なのだ。
避けられない症状の結果で、本人は辛いなんて文じゃないのもわかっているし、可哀相だとも思う。思うが、あの晴れた蒼の瞳が薄らと水膜を張って、白い頬はほんのりと染まっている。
…それがどんな想像に繋がるかは、ロイとて日一人の健康的な成人男子であることを鑑みてほしい。決してロイを責められるものではない。
ハボックは、つい三年前に初めて花粉症を発生した。まあそこのところも原理は割愛するとして…そこからロイのこの季節における、受難は始まったのだ。
さらにはこの季節現場に出してもろくに作業が出来ないハボックは、花粉が落ち着く時期がくるまでは、執務の分担内容をブレダ少尉と交換している。つまりは机上の仕事になる。部下も自然に書類仕事をすることになるのだが…一応、逆分野の仕事にもなれなければならない、ということでお互い納得はしているらしい。
…そんなわけなのだが、やはり室内にいてもくしゃみはでるわ、涙は出るわ、洟水は以下略。大部屋にいたのではとても他のものが集中できない、と言ったのはホークアイだ。
そうしてハボックはロイの執務室にほおりこまれることになった。
…もちろん、ロイは表向きはどうあれ本心では非常に喜んだ。なにせそのころハボックとロイは恋人同士になったばかりだったので、この偶然をハボックには悪いと思いながらも喜んだ…最初の数日は。

…あとはまあお察しの通りで、予想外に色気ただ漏れとなる恋人の姿に、ロイは日々忍耐を強いられている。強行軍に出たためしがないわけでは、ない。しかしすぐにあのくしゃみ鼻水涙、それらの症状に苦しむハボックに対し、そんな気はすぐに消えていった。
しかしハボックの色気は消えるわけではない。
今となってはホークアイがハボックを自分の下にほおり込んだのは、この事実を知っていて、ハボックの貞操を不逞なやからから守ろうとしたのかも知れない。
いや十中八九そうだろう。
ロイは恋人をとても愛しているしハボックもそうだと知っているが、世の中そんなものばかりではない。ムードがなかろうがなんだろうか、花粉さまに弄ばれているハボックをさらに弄ぼうとてぐすね引いているわけなのだ。
そんな輩から身を守るためには。
…ロイの元が一番安全である。逆に言えば、ロイの元が一番危険ともいえるが、そこはそれ。恋人に実はベタ甘なロイの性格を、ホークアイが知らないはずがなく。
かくてロイははやくこの麗らかな季節が過ぎてゆくのを待つのみ。
「大佐?」
は、とロイの意識が戻る。気づけば目の前に、ハボックのうるんだ瞳があって、じいっとこちらを心配そうに見つめている。
…きれいだ、となんのてらいもなく思っていたら。
「…っ!ハボっ」
ちゅ、と小鳥のようなキスを贈られた。
なにを、と反射的に顔をあげる。しっかり目があって…瞳の奥には、見知った欲情の色。
「…あんまりそんな目で見ないで?俺だっていろいろ大変なんだから…」
「なに?」
「俺だって、したいってこ…っ」
くしゅん。
見つめあう。
短い時間だったとは思うが、そんな短い時間でも目を合わせていれば、仕方がないな、と納得できるくらいには二人は大人だった、ので。
「…早く、夏になるといいな」
「…暑いの苦手なくせに」
「お前に触れられないよりはいい」
潤んだ青い瞳が瞠られる。
私をあまくみないように。焔の錬金術師で、階級は大佐。それから。
「お前の恋人、だからな」
はやく、お前を感じさせてほしい。

言外の願いを正しく理解したのだろう。
ハボックはイエスサーとおどけてロイの要請をうけいれ、再度くちづけようとして――…。

っくしゅん!

ロイの受難は、まだまだ続くようだ。

春?スキップで過ぎ去ってほしいものだよ、とは焔の錬金術師が何処かでにがにがしく語った言葉であった。

―――くしゅん。


<了>




コメントでこれはハボロイじゃなくてロイハボでしょうよ!?とお言葉いただいたいわくつきのこねたでした。しかし私はハボロイと言い張ります。
こねたログその2。

おにいさんといっしょ

どこ○けーたいのCMパクリ???



俺の、恋人はかわいい。
年上だけど、上官だけど軍部でも評判の綺麗どころだ。この人の下に配属された時は高嶺の花だ、と思っていたのだけれど。神様のいたずらというか、なんというかまさかの逆転ホームラン、俺達は両想いだった。
この人が俺のことを好きだって言ってくれたときどんな奇跡が起こったんだと卒倒しそうになったし、夜ベッドにもぐりこめば実は全てが夢だったんじゃないかって不安で不安でまんじりともできなかった。
だけど寝不足と一目でわかる隈を貼り付けて出勤した俺を、見たこともないような笑顔でこの人が迎えてくれて。いい歳して大声あげて泣きそうになったのは一生の秘密だ。
それからの日々はまさにばら色。
両想いになれたときに一生分の運を使いきったと思ったけれど、その後に続く日々のほうがよっぽど幸福だった。
全くもって有頂天になっても仕方がないだろう。青二才というかワカゾーな俺は、目先の幸福に囚われていろんなことを考えるのを先送りにしていた、のかも知れない。もう少し良く考えれば、今のような事態にはならなかったのかも知れない。
言い遅れたが現在の状況は、誰もが気安く立ち寄れる喧騒が心地よい類の、しかしいい塩梅にこじゃれた所謂飲み屋。
すこしちゃんとした格好できてくれ、といわれて無い頭を捻って考えて、シンプルに黒の上下に落ち着いた。以前デートの時に着て行って彼から絶賛されたそれだ。
なにやら俺のたっぱと金色の髪と青い目が引き立って非常になんだ。…まあキタ、と言ってくれた。どこに出しても遜色ないが、出すのが惜しいからあまりそれで外出するなよ、などと言われた日にはその日の予定をすべて無視して恋人をプチ誘拐した俺を誰が責められるだろう。誰も責められないはずだった。
しかし!
「俺がこいつの兄って奴だな。あーみりゃわかるだろうが血は繋がってねーよ。俺のオヤジの再婚相手がこいつの母親って訳だ。因みにオヤジどもは南方のリゾート地で悠々自適に隠居ライフを年甲斐もなく新婚気分で過ごしているから。こいつの面倒は俺が見ているわけだが。あー何かと好き勝手にして下さっているようだな、ハボック少尉?」
「そういうわけでな。全くもって不本意ながら、戸籍上はれっきとした私の兄でもあるんだ」
「不本意ってなんだよ、ロイちゃん!俺はお前のこと掌中の珠と育ててきたのに!」
うん、まあなんだ。ブレダお前が俺のことを哀れみの眼で見ていたのはこれを知っていたからか…!所詮一人者の僻みと思っていた俺が悪かったよ!だけどこれは教えてくれてもいいだろうが!
「おやおやおや親友を責めるんじゃないぜ?ハボック少尉?サプライズにしないと面白くないだろう???まあそんな訳で俺がロイの兄、な訳だ。」
人を殺せそうな視線で俺を見ながら、ヒューズ中佐…そう、ヒューズ中佐だ。軍部内敵に回したくない人物ランキングで上位3位以内を毎年キープしているマース・ヒューズ中佐だ…!はっきり言って俺もこの人だけは敵に回したくない。
この人の敵になるくらいなら南方のジャングルでゲリラ戦に身を投じたほうがいい。
っていうかいつも思ってましたが。アンタ携帯電話メタルパープル+デコシールってどんな趣味なんですか…。
「ロイがお前の恋人で俺がロイの兄ってことは、いずれお前の兄という可能性もあるわけだ。それがどういうことかわかるか、俺が兄って事は俺とお前は仕事上の電話だけでなくプライベートで顔を合わす必要がある、つまり!電話番号だってプライヴェート№を知る必要があるし、話だって仕事以外のものをする必要性が高い!
そうだ、な?」
だからそのおっそろしい目やめてください。俺の言うこと聴かなきゃお前のこととって喰うって背後のスタンド言ってます!?
まさに俺は蛇に睨まれた蛙状態。真っ白になった頭ではこの状況を打開する術などなくて。俺は無意識にロイに助けを求めようとしたのかも知れない。
「!」
しかし、ふと見たロイは、何時もの自信に溢れたあの表情ではなく、どこか不安げにしか見えなかった。
ちらりと傍らのヒューズ中佐を咎めるように見るが、言葉に出しては言わない。変わりにちろちろとこちらを見つめているが、やはり何も言わない。
だが俺にはその表情だけで充分だった。思い出した。俺はこの人の恋人なんだから、この人を支えなければならない。僅かな不安すら浮かべさせてはならない。それが俺との関係のことなら尚更だ。
だって知っている。
俺はこのひとに確かに愛されているのだから。
ポケットに突っ込んであった携帯を取り出す。二人で選びに行ったとき、迷わずに手に取ったブラックボディのそれ。
…ロイの色だと思ったから。
取り出したそれに記録されたメモリの、とある番号を呼び出す。
迷わず発信ボタンを押すが、あまりのことに表情筋がついていかない。今俺は無表情とも取れる、ひどく硬直した顔をしているのだろうだろう。実際情けないこと限りないが、いいのだ。
なくして惜しいのはロイだけだ。それを失くさないためなら、軍部で評判の腹黒い男だろうと、親友…いや、弟馬鹿と判明した男だろうと、負けることは出来ない。
そう、決めたから。
ぴりりりり、とメタリックパープルの携帯がなる。
鋭いペールグリーンの視線は俺から離れない。
…俺も、逸らさない。
膝の上で握った手は汗で今にも滑ってしまいそうだった。ごくり、と生唾を飲み込んだ音がやけに大きく聴こえると思ったとき、ヒューズ中佐に動きが生まれた。
ひどく落ち着いた動作で、ヒューズ中佐は操作ボタンに指先を滑らす。そうして一点を押す仕種を行った。
着信を示すボタンライトすらもヒューズ中佐を照らしているように見えてさらに恐怖は駆り立てられた、が。せめて目は逸らすまいと真直ぐに、彼を見返していると。
「はーいおにいちゃんです~」
なんだあんたこのギャップは。
「ハボック皆まで言うな」
アホみたいに明るい声が帰ってきたと思えばすかさず大佐からのフォロー。あの俺そんなにヤヴァイ顔してましたか…。
「うふふジャンくんたらひっかかった★いけないなあこのくらい看破できないようじゃこの軍部の荒波を渡っていけないぜ★ってことでおにーちゃんを敬いなさいね、ジャン坊?」
ジャン坊って何ですか…三百字でまとめて提出してみやがれ…!
っていうか言っていいですか…。
…。
……。
………。

俺の純情返して。

END





ずいぶん昔の携帯CMぱろでした。旧日記からサルベージシリーズその一ですー。

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